がん検診という言葉をなんとなくは知っていても、その意義や目的についてはあまり知らないという方も多いのではないでしょうか。実は、医師を含む医療従事者でさえあまり明確に知らずに仕事をしていることもあります。がん検診に関する知識があると、みなさまの今後にとても有益かと思いますので、ぜひ理解を深めていただきたいと思います。
がん検診には2種類あります
がん検診には、市町村のがん検診などの「対策型検診」と人間ドックなどの「任意型検診」という2つの種類があります。
対策型検診は対象人口における癌死亡率の低減を目的としており、公共政策の一環といえます。一方で任意型検診は個人が自身のために受ける検診で、個人の癌死亡率の低減を目的としています。
以下に表でまとめます。

大まかに言うと「対策型検診は公的なもの」「任意型検診は私的なもの」という認識で良いと思います。
なお対策型検診は健康増進法を根拠法令としており、市区町村が政策として実施するものです。
対策型検診
患者のみなさまの視点からは、対策型検診は「検査を安く受けられる制度」というものになるかと思います。
札幌市の胃がん検診を例にとりますと、胃バリウム検査は2,200円、胃カメラは3,500円で受診することができます。さらに年齢や経済状況によっては自己負担が無料になる場合もあります。一方で、人間ドックでは胃バリウム検査で12,500円、胃カメラなら18,000円ほどの費用がかかります。これは札幌市が検査費用の一部を負担しているということなのですが、その原資はみなさまの納めた健康保険料や税金ともいえます。

このため、対策型検診では公共的な利益と不利益を天秤にかけ、公的費用を支出すべき検査とそうでない検査とを分ける必要があります。
要するに、対策型検診では合理的に費用を使う必要があるため「念のためにアレもコレも調べておく」といった検診はできないということですね。
任意型検診
一方の任意型検診は普通の買い物に近い感覚です。多くの検査を受けたければ多くの費用を支払います。人間ドックが任意型検診の代表例です。原則として費用は全額自己負担ですが、加入している健康保険組合の施策や職場の福利厚生などにより、費用の一部を負担してもらえる場合もあります。
どのように検査を受けるのが良いか
みなまで言うのも無粋ですが、対策型検診を受け、不足分を任意型検診で受けるのが最も「お得」です。どこまでの検診を必要と感じるかは人それぞれですから、対策型検診までで十分と考えるのであればそれで良いですし、もっと死亡リスクを下げたいのであれば任意型検診を足せば良いのです。(なお本稿の主旨からは外れますが、検診など受けずに天命を待つという考え方も一概には否定できないものだろうと個人的には思います。)
反対に最も「お得じゃない」のは、対策型検診で受けられる検査を任意型検診で受けてしまうことです。せっかく納めた税金や保険料なのですから、それを原資とした政策の恩恵も受けた方が宜しいかと存じます。
また、みなさまが対策型検診を受けられるようになると、その検診の効果をより正確に検証できるようになるという利点もあります。対策型検診では、受診人数、検査が陽性であった人数、陽性者のうち精査を受けた人数、実際に対象疾患が見つかった人数の全数把握を行っています。これにより、その検診にどれほどの費用対効果があったのかを振り返って検証することができます。しかし受診率が低いとその検証の統計学的な信頼性が低くなります。
来年度以降もその検診を政策として継続すべきか否かを判断するためには検診の効果の検証が必要ですから、行政は対策型検診の受診率向上を目指しているようです。
札幌市のがん検診
では実際に札幌市ではどのような対策型のがん検診が行われているのでしょうか。以下にご紹介します。

(出典:札幌市webサイト)
画像は札幌市のwebサイトからの引用です。
2024年現在では胃癌、大腸癌、子宮癌(頸癌および体癌)、乳癌、肺癌に対するがん検診が行われています。
またがん検診に類する検診として、胃がんリスク判定や前立腺がん検査という対策型検診も行われております。
詳細は札幌市のwebサイトでご確認いただけます。
また実施医療機関の一覧も検診の種類ごとに公開されておりますので、検査をご希望の際にはご確認されると宜しいかと存じます。
当院は①胃がん検診(胃カメラ) ②大腸がん検診 ③胃癌リスク判定 ④前立腺がん検査の4つの検診を担当しています。
当院に通院される患者のみなさまへ
今回は札幌市のがん検診の概要をご説明しました。対策型検診は公共政策として市民に提供されている予防医療です。ご自身の健康チェックのために活用しない手はないと思います。また私自身が「がん検診の受診をお勧めしてさえいれば」と後悔しないためにも、本稿を執筆した次第です。さらに検診の受診率が高まると政策としての意義も大きくなりますので、是非がん検診を受けられることをお勧めします。
ふと思い出したときで結構ですので、がん検診を受診してみてください。当院では胃がん検診(胃カメラ)は予約制ですが、その他の検査は当日に窓口でお申込みいただけます。札幌市に在住の方であれば受診券なども不要で、初診でも大丈夫です。保険証などの住所が分かる身分証をご持参ください。
胃がん検診(胃カメラ)については事前のご予約をお願いします。以下の電話番号にお電話をいただき「札幌市の胃がん検診で胃カメラを受けたい」とお伝えいただければ、ご予約を承ります。
