当院ではメルスモン®というプラセンタ注射製剤を使用しています。メルスモン®は国内の感染のないヒト胎盤を酸で加水分解し、最終滅菌(121℃ 30分間)されて精製されます。多種多様なアミノ酸やビタミン類を含有し、これを皮下注射することで更年期症候群を改善するというデータが示されています1)。さらに、顔面の皮脂量や水分量を増加させ2)、また抗酸化作用を示す3)ことで美容に資するともされています。
1)Y. Karasawa, et al. Jpn Pharmacol Ther. 9(3) ; 299-308 (1981)
2)C. Yoshikawa, et al. The Journal of Japan Society for Menopause and Women's Health 19 ; 207-215 (2011)
3)M. Moriya, et al. Anti-Aging Medicine 15-6 ;724-729 (2019)
科学的に敢えて批判的な言い方をすると「入り乱れた有機化合物の中のどれかが効果的なようだけど、何がどのように良いかは特定されていないし、なぜ良いのかも分からないが、統計学的には効果があると示されている」という漠然とした薬剤です。漢方薬のイメージに近いかもしれません。
保険適用の条件
メルスモン®は、更年期症候群あるいは産後乳汁分泌不全に対する治療の場合に保険適用があります。
産後乳汁分泌不全は産科、婦人科あるいは内分泌科での治療になるかと思いますので、当院では主に更年期症候群の患者さんに保険適用で使用することがあります。
メルスモン®の保険適用の条件
- 身体的に女性であること
- 原則として45~59歳であること
- 医師が更年期症候群と診断していること
これらの条件をすべて満たしており、更年期症候群の治療のためにメルスモン®を注射する場合に、保険適用となります。
45~59歳の年齢制限は原則的なものです。44歳以下あるいは60歳以上でも、症状や血液データによっては保険適用が可能なこともあります。
自由診療でのメルスモン®注射
美容目的に使用する場合は、保険適用がありません。
自由診療でのメルスモン®注射
- 1回につき2,000円
- 最初の2週間は週3回(計6回)、それ以降は1週間に1回ほど注射するのが一般的です。
- 上記以下の頻度であれば、ご希望のスケジュールに応じて注射いたします。例えば、最初からずっと月1回だけ注射されている方もおられます。
メルスモン®注射の注意点
最後にメルスモン®注射の注意点です。
メルスモン®注射の注意点
- 論理的に、未知の感染症のリスクを完全に排除できません(※)。
- 上記の理由で、一度でもプラセンタ注射を受けると、今後ずっと献血ができなくなります。
※未知のものがあるかないかを調べることは、その対象が未知であることそのものを理由として、極めて困難か不可能であるという論理です。「未知証明」「消極的事実の証明」または「悪魔の証明」と呼ばれるものです。
なお、これまでにメルスモン®によるウイルス感染症、細菌感染症およびプリオン病の報告はありません。