保険診療を行う医療機関では、厚生労働省が定める診療報酬制度に則って医療費を算定します。
ここではクリニックを受診したときにかかる初診料と再診料について、それぞれどのような場合に算定されるかをお話しします。

初診料と再診料

患者さんが医療機関を受診したときにかかる基本料金として、基本診療料というものがあります。基本診療料には、初診料、再診料、外来診療料という3つの種類があります。このうち外来診療料は200床以上の病院の外来を受診した際に算定する項目ですので、クリニックで算定することはありません。
つまり、クリニックを受診した際には初診料あるいは再診料のいずれかが算定されることになります。2024年6月時点の診療報酬では、初診料は291点、再診料は75点と定められています。これに患者さんごとの自己負担割合(0~3割)をかけて基本診療料の自己負担額が決まります。

初診料と再診料

  • 初診料は、医療機関において初診を行った場合に算定されます。
  • 再診料は、医療機関において再診を行った場合に算定されます。

読んで字のごとくですが、それぞれ上記のように定義されています。
ここで注意していただきたいのが「初診=患者さんが初めてその医療機関を受診した場合」あるいは「再診=患者さんが再びその医療機関を受診した場合」ではないということです。

初診と再診

では、その受診が初診か再診かはどのように決められているのでしょうか。初診と再診の両方について説明すると煩雑になるので、初診とはどのような場合かをご説明します。初診以外はすべて再診という認識で構いません。

初診に該当する場合

  1. 患者さんが初めてその医療機関を受診するとき
  2. 以前の疾患が治癒してから、次にその医療機関を受診するとき
  3. 患者さんが自身の都合で治療を中止してから1ヶ月が経過し、次にその医療機関を受診するとき

初診に該当するのは上記1~3の場合のみです。

1~3のそれぞれに具体的な例を挙げてみます。なお以下の文中の「高血圧」と「風邪」は疾患の一例ですので、それぞれ「慢性疾患」と「急性疾患」に読み替えていただければ理解が深まるかもしれません。

初診の具体例

  1. 例を挙げるまでもなく文字通りですね。
  2. その医療機関で治療中の疾患のない患者さんが、以前の風邪が治ってから、また別の風邪で受診するとき
  3. 高血圧で1月1日にその医療機関で診察を受けて2ヶ月分の処方があったが、3月1日に処方薬が切れてからも受診せず、4月1日に受診したとき

上記のような場合は初診の扱いになります。
また、よくあるご質問として「高血圧で医療機関に通院しているが、あるとき風邪をひいてその医療機関を受診した場合には初診になるか」というものがあります。これは初診ではなく再診になります。
ただし高血圧がその医療機関において治癒、あるいは中止(上記の3のようなケース)の転機になっている場合は、この風邪の受診は初診になります。

実際の運用

ここまでは初診と再診の決め方について、原則的なルールに基づいてご説明しました。
しかし実際の運用上、原則的なルールを適用すると、医師の感覚では再診でも良いと思われる受診が初診になってしまうことがあります。このため、少し再診に寄せて算定することもあります。

例えば上記の3の「高血圧で1月1日に診察し、2ヶ月分の処方をしていたが、3月1日に処方が切れてからも受診せず、4月1日に受診した」という場合では、原則的なルールでは初診の扱いになります。
しかし、仕事が忙しかったり、あるいは内服忘れなどで薬が少し余っていて、予定より1ヶ月遅れて受診することもあるかもしれません。この場合は、当院では再診の扱いにしています。

しかし受診したのが4月1日ではなく6月1日であれば話が違ってきます。3ヶ月間もの空白があると、連続した一連の治療とは言えず、また改めて治療計画を立て直す必要があります。これは実際に初診相当の診療内容になりますので、当院でも初診の扱いにしています。

このあたりのさじ加減は医療機関によって異なっていることがあります。

まとめ

医療従事者にとってさえ難解な診療報酬制度ですが、今回は初診料と再診料についてご説明させていただきました。
要するに、その医療機関を初めて受診する場合か、その医療機関でのこれまでの治療と連続性のない受診の場合は、初診の扱いになると考えていただければ良いかと存じます。
・・・と言い切ってしまうと、季節性の疾患やアレルギー性の疾患などが例外になってしまったり※1)、高血圧で通院中の患者さんに大腸がんの疑いで検査をするのは一連の受診なのか※2)という疑問が浮かんだりするので、やはり単純明快に説明するのは難しいところです。

※1)花粉症や喘息などは患者さんにとってはずっと変わらない体質なので、連続性があるように感じると思います。しかし、前回受診の処方が切れてから3ヶ月間以上の間隔が空くと、初診の扱いになります。

※2)一方で、高血圧と大腸がんという全く連続性のない疾患にもかかわらず、こちらは一連の受診として再診の扱いになります。

正直に申し上げますと「これは実質的には初診だけどな」「これは実質的には再診だけどな」と思うこともありますが、患者さんの数だけあるとも言える受診のパターンを初診か再診かの2種類に分類しようとすると、このあたりが制度の限界なのかもしれません。