SASとCPAP
読んで字のごとく、睡眠中に無呼吸になってしまう状態を睡眠時無呼吸症候群(sleep apnea syndrome;以下 SAS)といいます。これに対する物理的な治療法を持続的陽圧換気(continuous positive airway pressure;以下 CPAP)といいます。
SASの種類
SASには大きく分けて、中枢性(CSAS)と閉塞性(OSAS)という2種類の病態があります。
中枢性睡眠時無呼吸症候群(CSAS)
ヒトが無意識に呼吸をしているのは、脳の延髄にある呼吸中枢の機能によるものです。この呼吸中枢が何らかの理由でエラーを起こすと、無意識の呼吸が疎かになり、睡眠時に呼吸をしなくなってしまいます。これがCSASの病態です。
中枢性睡眠時無呼吸症候群の特徴
CPAPには一定の治療効果がありますが、心不全など他疾患の結果として発症することも多く、その原疾患の特定および治療も重要になります。
閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)
舌の根本を舌根といいます。仰向けで眠ると、この舌根が喉の奥に落ち込んで気道を閉塞することがあります。この閉塞が軽度ならイビキで済みますが、高度になるとOSASになります。
「グゴゴー・・・ガッ!・・・」というイビキを聞いたことはありませんか。この「ガッ!」のところで気道が閉塞しています。
閉塞性睡眠時無呼吸症候群
CPAPに高い治療効果を期待できる病態です。
肥満、あごが小さい、首が短いなど、発症しやすい体型があります。また飲酒やベンゾジアゼピン系の睡眠薬も、このタイプのSASを引き起こす要素になります。
SASの症状
SASの症状を一言で表すと「睡眠の質が低いことによる体調不良」と言えます。
SASの症状
- しっかり眠ったはずなのに起きると体がだるい。
- 朝起きると頭痛がしている。
- 抗いがたいほどの眠気を日中に感じる。
- 血圧が高い。
- 同居の方から睡眠中に呼吸が止まっていると指摘される。
CPAP
CPAPは小型のエアーポンプとチューブ、マスクで構成される治療機器です。
このマスクを就寝前に装着して眠ります。するとエアーポンプが呼吸のリズムを感知し、気道が閉塞しないように空気圧をかけてくれます。

CPAP導入の流れ
SASに対するCPAPは、ポリソムノグラフィー(polysomnography;以下 PSG)という検査の結果が以下のいずれかを満たせば保険診療の適用となります。
PSGは体に計器を取り付けて一晩眠り、睡眠中の無呼吸や低換気の回数を計測する検査です。ご自宅で行うことが可能です。
保険適用でのCPAP導入の条件
- 簡易PSGでAHI≧40
- 精密PSGでAHI≧20
- AHI(apnea hypopnea index)というのは1時間あたりの無呼吸および低換気の回数です。
SASを疑ったら、まずは簡易PSGを行います。簡易PSGでAHI≧40なら、この時点でCPAP導入の対象です。
簡易PSGでAHI<40の場合、精密PSGを行います。精密PSGでAHI≧20であれば、この場合もCPAP導入の対象となります。
なお精密PSGでAHI<5ならSASの疑いはなく、5≦AHI<20なら歯科でのマウスピース作成や寝姿勢の工夫を行いつつ経過観察することになっています。
PSGによるSASの診断からCPAPの導入まで当院で行えますので、お悩みでしたらご相談ください。